寄稿者:橋本繁美
暦では秋のまんなか。春分とおなじく、昼と夜の時間が等しくなり、太陽が真東から昇り、真西に沈む日。これから次第に秋が深まっていく。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉は、秋にもあてはまる。ただし、「彼岸」といえば春をさすので、区別するために「秋彼岸」「のちの彼岸」というらしい。お彼岸というのは、もともと仏教用語で、先祖供養の日とされている。おはぎと花をもって墓参りかな。
秋刀魚(さんま)
♪秋刀魚 焼けたか 粋な親父の声がする…(斎藤哲夫)。落語なら『目黒の秋刀魚』に限る?! 殿さま「あのうまそうな匂いは何だ?」「農家でサンマを焼く匂い、下ざまが食す下魚(げうお)にございます」「苦しゅうない。これへ持て」「恐れながらサンマは殿がお召しあがりにござりませぬ」「だまれ!戦場で火急の時、あれが食えぬ、これが食えぬといっていられるか。苦しゅうない、目通りを許す」というわけで、家臣は農家に行って焼きたてのサンマを分けてもらった。殿はあまりの旨さに感激し、数尾をたいらげた。(略)それほど、ジュージュー脂のしたたる旨いサンマの虜になった殿さまの話。聴いているだけで、食べたくなってくる(笑)そんな秋刀魚のおいしい季節。だが、今年も漁獲量が少ないため、かつてのように庶民の味とはいかないようだ。
七輪に火を起こし、網に新鮮な秋刀魚をのせて、下の方から団扇でバタバタと煽ぐ。炭の上に脂が落ちて立ちこもる煙。勢いよく煙をあげながら焦げ目をつけていく。ほどよいところで、手際よくひっくり返す。焼き具合はええ感じだ。もうすぐ焼きあがる。焼けたら網を換え、また秋刀魚を焼く。そんな作業を繰り返して、ポスター用に撮影していたのを思い出す。いまは姿を消したが京の路地裏、石畳のうえに七輪。もちろん、火を使うため、周辺の家に許可をもらっての話。みなさん寛大で協力的、良き時代だった。