寄稿者:橋本繁美
いきいきと漲る生命の色
麦の穂が実り、少し満ちてきたという「小満」。それが転じて、すべてのものが次第に成長し、天地に満ちはじめる時節になったという。「新緑」から「万緑」へと移り変わる頃。
「緑」はもともと色の名前でなく、みずみずしい様子を表わした言葉といわれる。昔から、つややかな黒い髪のことを「みどりの黒髪」、赤ちゃんのことを「みどり児(ご)」といわていれる。
青葉の「青」も広い範囲の色を含む言葉。古代、色は「あか」「くろ」「しろ」「あお」の四つの区別しかなかったから、「あお」のなかに緑色も含まれていたということ。目で、肌で、命があふれんばかりに躍動する季節が楽しめる時期。
空豆(そらまめ)
空豆は「蚕豆」とも書く。一説には、蚕の繭に形が似ているからとか、蚕を飼う初夏に食べるからとかいわれる。空豆は字のごとく、莢(さや)が空に向かって上向きにつくから「そらまめ」。大空への思いがいっぱい詰まっているだけに、空豆はおいしい。