寄稿57 忘年会・除夜の鐘・年越しそば

寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

忘年会(ぼうねんかい)

本来なら、この時期は忘年会のシーズンであるが、コロナ禍によって静かな感じだ。『日本歳時記』(貞亨五)によると「12月下旬の内、年忘れて、父母兄弟親戚を饗することあり。これ、一とせの間、事なく過ぎしことを祝う意なるべし。(中略)もろこしにも歳忘にひとしきことのはべるなり」とある。「年忘れの宴」は江戸時代からあったようだ。『大辞林』によると、忘年というのは「①年の終わりに、その年にあった苦労を忘れること。としわすれ。②年齢の差を忘れること」とある。忘年会といえば、酒がつきもの。酔うために飲むのではなく、酒を楽しむ飲み方が大事。飲めない人に酒の無理強いなどもってのほか。献杯の悪習もやめて、男女の差別なく、明るく、愉しく、美味しい時間を過ごしたいもの。あ~、はやくマスクやアクリル板のない宴に戻れる日を願って今宵は独りで乾杯!

除夜の鐘(じょやのかね)

大晦日の夜から新年にまたがって撞くのが除夜の鐘。除夜とは「旧年を除く」という意味で大晦日のこと。冴えわたる夜空に響く鐘の音、百八つ。1年間の煩悩を払い除け、新たな年を迎える除夜の鐘。各寺院によって鐘の撞き方や作法はさまざまで、参拝者が撞けるところもある。
名刹の多い京都では、東山にある浄土宗総本山・知恩院の除夜の鐘が、日本三大梵鐘のひとつとして名高い。親綱を引く僧侶と、子綱を引く16人の僧侶で、「えーいひとつ」「そーれ」の掛け声のもとに鐘を撞く光景はもとより、力強く鳴らす音は圧巻のひと言。殷々(いんいん)と響く鐘の音こそ、新年の足音。清々しく一年が迎えられそうだ。

年越しそば

大晦日の夜、家族そろって長寿や幸運を願いながら食べるのが年越しそば。細く長く延びるそばだけに「延命長寿」につながるといわれるが、由来はさまざま。そばは切れやすいため「旧年の災厄を切る」とか、金銀細工師が飛び散った金銀粉をそば団子で集めたことから「金運上昇、商売繁盛」「運が開ける」など、そばに込められた願いはいろいろ。たくさんのご利益がありそうな年越しそばで、気持ちよく新年を迎えたいもの。