寄稿者:橋本繁美
奄美大島ではじめて「島唄」を生で聴いたとき、躰の芯から震えるものを感じた。歓迎会の酒席の場で、初めて見る三線(さんしん)と呼ばれる楽器を手に、グイン(地声から裏声と変わる瞬間的なこぶしの一種)とよばれる独特の歌唱法が心を掴むのか。何ひとつ知らなかった私は、島唄に自然と一体になる歓びを感じ、島で生きる人の想いを教えてもらったような気がした。と、いっても奄美ならではの方言による歌詞だけに、わからない部分も多く、歌の前や後の解説でほんの少しずつ理解することができた。
一般的には、島唄といえば、♪島うたよ風に乗り、鳥とともに海を渡れ…『島唄』(THE BOOM)が大ヒットし、その名が知られるようになったと思う。奄美大島に来るまで、島唄は沖縄民謡だと思っていたが、もともとは奄美諸島で歌われていた民謡のことだと教えてもらった。つまり、奄美民謡島唄ということだ。
奄美の人々にとって、お祝いや事やお祭りといったハレの行事から、日常の暮らしのなかに島唄がある。さまざまな素直な感情を、思いのままに唄に載せて表現し、時には唄の掛け合いなどにより、恋する男女の縁を島唄が結んだという。いつの世も老若男女を問わず、その場の人々の繋がりや絆を深めてくれる島唄、たのしく盛り上がる雰囲気だけでなく、時には共感しあえるところが素晴らしい、奄美大島の大切な文化と地元の人はいう。なるほど、何かあると三線の伴奏で島唄が歌われ、一気に盛り上がり、踊りだす奄美の人々。歓迎を受けた私たちは、何とも言えない歓びの島唄に酔いしれていた。そういえば、奄美民謡歌手・元ちとせさんの『ワダツミの木』が大ヒットしかけた時、上田さんに瀬戸内町に連れて行ってもらったな。その話は次回へ。