寄稿41 奄美の海に魅せられて(続々)

奄美探訪記と大島紬寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

ダイビングで潜るたびに、その美しさに感動を覚えるばかりだった。それまでは知らなかったコバルトブルーの澄み渡った奄美の海には、色とりどりの魚たちが群れ遊ぶサンゴ礁の世界。できるだけ近づこうと思うが、ダイビング青葉マークの私はきれいなサンゴ礁を傷つけないよう慎重に、慎重に近くに行き、じっと観察する。サンゴ礁は、海産動物(刺胞動物)のサンゴが成長してできた岩礁といわれる。サンゴは共生している褐虫藻という植物プランクトンが光合成で作りだす養分をもらって生きているため、海水が透明で太陽光が届く場所を好むらしい。知らなかった。6月の夜間に産卵して、幼生となって海面を漂い、環境のお整った岩盤に固着し、成長していくと教えてもらった。台風などで、海をやさしく掃除してもらうこと大事なんだとも、誰かがいっていた。穏やかなサンゴもあれば、サンゴ畑のようなものや、まるい平面のサンゴ礁など、種類はいろいろ。そのサンゴ礁には、多くの魚たちが暮らしている。潜るまでは魚の名前は一切知らなかったが、スズメダイ、クマノミ、ツノダシ、チョウチョウウオなど、出会うたびにうれしくなって挨拶したくなる。プランクトンなど餌や隠れ場所としてのサンゴ礁。きれいで明るい海が、別世界を教えてくれる。気がつけば、とても落ち着いている自分がいる。まるで海中とは思えない安らぎを覚えている。ある人が、お母さんの母胎にいるときの安らぎだよと教えてくれた。そうかもしれない。

海に潜る楽しさを覚えた私たちは、時間の許す限り、京都と奄美を往復した。9月のある日、台風の到来で予定していた飛行機が飛ばない。午前10時、京都組の大嶋さんと私は、それでも準備(着替えくらい)をして伊丹空港へ向かった。あいにくまだフライトの予定はないといわれ、とりあえず「串くら」(京のフクナガさんとこ)で昼食をとって時間をつぶす。午後2時半くらいの飛行機が、鹿児島空港までなら飛ぶというので、それに乗って奄美大島に近づいた。出張で奄美にいる上田さんに電話をかけ、鹿児島最大の繁華街・天文館の近くに宿をとってもらった。そして、翌朝、奄美大島まで飛んだ。鹿児島空港までは約1時間ほどかかった。空港に着くと、急ぎ足で飛行機に飛び乗ったことを覚えている。係員の人たちも親切でやさしかった。そして、目的地に到着。台風が過ぎ去った海は潜れない。波は穏やかだが危険ということでダイビングはできなかった。それでも、我慢できなかった3人は遠浅の海岸で素潜りをして遊んだ。大嶋さんは魚とりがうまい。上田さんの潜り方は垂直できれいだ。私はただ見とれているだけ。無理はしない、海の中は愉しい。明日のダイビングを夢見てホテルに戻った。あの時は熱かった。1本でも多く潜りたかった。一度、夢中になると何が何でも実行する男三人組だった。(つづく)