寄稿28 Hello Interview ! ~上田瞳さん~

枡儀のいろは寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

「気づき」がすべての出発点。

日本も、業種を問わず女性が第一線で活躍する企業が増えてきた。ここ、枡儀さんも、いきいきと働く女性スタッフが社内を明るく元気にしているように感じる。そこで、kimono factory nono主宰の上田瞳さんに、仕事に対する意気込みを聞いてみた。

彼女は、三重県津市の出身で、京都造形大学で空間デザインを学び、IT関係に就職。主にホームページを提案する仕事で、営業もデザインもこなしていたが、その会社が東京に移転するのを機に退社。そして、せっかく京都にいるのだから、もっと京都らしい企業に勤めたいと思って探していたところ、求人誌に掲載された広告が目にとまり、試験を受けたのがこの業界に入ったはじまりだそうだ。といっても、ここに来る前のこと。そこで5年ほどキャリアを積んだ後、枡儀さんに入社して10年が経つ上田瞳さん。最近はkimono factory nonoの企画デザインも手掛けている。

「いまでこそ、きものを着るようになりましたが、最初の頃は、きものはあくまでも商品。きものをいかに売るか、どうすればお客様に買ってもらえるか。そんなプランばかりを練っていた」と話す。無理もない。まだまだ現実の厳しさや、中身も知らない夢見がちな若者だったと思う。それから「きもの」とは何かを自分なりに研究し、スタッフやブレーン、得意先とともに商品開発の日々が続く。「そこに存在する美しさ、染めと織りの凄さ。商品の魅力や本当の良さを理解し、自分のものにするのにかなり時間がかかった」と振り返る。

少し大袈裟かもしれないが、「きもの」のもとを辿れば、人が生きるために必要な衣食住のひとつ。そこから工夫というか、叡智や技術が重ねられて、暮らしに役立つもの、身につける歓びや愉しさへと時を経てきたものといえる。装い、ファッション、おしゃれ。現在でも、染織家たちは山野に自生する植物を採集したり、足りなければ栽培したりして、染料や糸をとっている。自然ははかり知れない恵みを与えてくれていると、かつて染めや織りに携わる人たちに教えられた。人が自然に向けるまなざしは、色の原点なのかもしれない。

「きもの」という商品をわかりやすく伝えるだけでなく、もっとお客様に共感が得られる何かが足りないと気づき、模索の日々が続いた。そして、「もっと感情の深い部分でコミュニケーションできないだろうか、と理想と現実の乖離に悩み、少しずつ成長を遂げている最中(まだまだ青いですが)」と笑顔を浮かべる。きものを作ること、売ること、着ること。女性ならではの感性も生かし、これからも30代後半の女性にとって、リアルなきもの生活がよりおしゃれで愉しいものになる、そんな提案をしていきたいと語ってくれた。