寄稿144(終) 哲学の道を歩く/ 京を歩く

京を歩く寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美 編集:枡儀

「哲学の道」とは、京都帝国大学の西田幾多郎(きたろう)、河上肇(はじめ)、田辺元(はじめ)らの哲学者が琵琶湖疎水に沿う小道を散策したことで呼ばれるようになった。春は桜、秋は紅葉、もちろん夏も冬も心落ち着く散策路で多くの人が訪れるが、早朝や夕暮れ時は人影も少なく、静かな雰囲気を楽しめる。この道は若王子橋から銀閣寺橋まで、およそ1.5キロメートルの長さ。

個人的には、今出川通白川を銀閣寺に向かって歩き、白沙村荘(橋本関雪記念館)にある美術館で美に触れ、素晴らしい庭を楽しんだ後、銀閣寺橋から哲学の道を南方に歩きたい。もちろん時間のある人は銀閣寺(慈照寺)へどうぞ。琵琶湖疎水に沿って進むと、洗心橋に表われる道標に「法然院」の文字。そこから少し東へ向かうと法然院の入口がある。竹垣に案内され茅葺門を一歩入れば、目の前に広がる白沙壇。白砂に描かれたみごとな砂絵がふたつ。その白沙壇のまんなかの道を通れば、身も心も清められると教えられたことを覚えている。ここは写真家の水野克比古さんを取材した時、いろいろと寺の魅力を教えてもらった。法然院の住職は昔から若手のクリエイターやアーティストの発表の場としても提供されている。谷崎潤一郎や河上肇らも眠る寺でもある。

哲学の道に戻り、西田幾多郎の碑を見て、法然院橋までくると安楽寺、霊鑑寺へと続く。この道のりの魅力にはまって、かつて授業「京都学」一環として学生たちとよく来たところ。独りのんびりと人生哲学について考えるのもいいかもしれないと、川沿いの石席に座りながらふと思った。(終)

伝えたい「日本のこころ」

長い間お世話になった『ことばの遊園地』、突然ですが今回をもって終了します。はじまりは、旧暦で日本ならでは季節を再認識してほしいと「二十四節気」と「七十二候」を紹介してきました。それぞれの季節が自然の豊かな表情と恵みをもたらしてくれる日本の旧暦という太陰太陽暦。季節に寄り添う、暮らしを豊かに愉しむためにというのが狙いでした。そこには「二十四節気」の「気」と、「七十二候」の「候」、つまり「気候」そのものにあるといえます。次に紹介した「季節の彩り、日本の色」も、同じ考え。美しい色名とともに季節を感じてもらえればと思い綴った。時代はどんどん変わっても、決して忘れてはならない「日本のこころ」。また、どこかで。ありがとうございました。