寄稿121 細い路地がたまらない先斗町 / 京を歩く

京を歩く寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

先斗町(ぽんとちょう)は、鴨川と木屋町通の間にある京都を代表する花街のひとつ。南北に約500メートル、道幅は2メートルにも満たない先斗町通。千鳥マークのちょうちんが揺れる細い道の両脇に、芸舞妓さんたちの稽古場や茶屋、割烹など、昔ながらの店がひしめく。夕刻ともなれば、人がすり合うように往き来する。鴨川沿いに面した店舗は納涼床を設けるところも多く、最近では古い建物を活かしたおしゃれな隠れ家的な店も増え、歩くだけでも祇園とは一味違う風情たっぷりの路地裏感が漂う。聴きなれない「先斗」はもともとポルトガル語のポント(先の意)からといわれる。

以前、三条通のときにもふれたが、三条大橋西詰めからつながるこの路地は、やはりクラシカルな建物の「先斗町歌舞練場(かぶれんじょう)」。例年5月に開催される「鴨川をどり」で有名なところで、以前、母親に頼まれてよく公演チケットを買いに来たところ。ステージは2部構成、価格も手頃で、普段なかなかお目にかかれない芸妓さんや舞妓さんの踊りを気軽に楽しめる素晴らしい劇場だ。

先斗町通の真ん中あたりに小さな山がぽつり。訪れたときは、まわりに桜の花がみごとに咲き誇っていた。ここは大人も子どもも、登れば視界良好の気分になる、のどかな公園。鴨川に面してロケーションも最高。まるで花街や歓楽街にいることを忘れてしまう。時間があるときは立ち寄ってみる価値はあると思う。

夕刻ともなれば、人がすり合うように往き来する先斗町通。南北の魅力はもとより、西の高瀬川、木屋町通に抜ける細い路地がいくつもあり、一杯呑み屋から洒落た飲食店など奥に明かりが灯る。お気に入りの店を探して歩くのも先斗町ならではの楽しみといえる。

運が良ければ、すれ違う舞妓さんの姿も一層あでやかだ。かつて大先輩が連れて行ってくれたお店や、気の合う仲間と立ち寄った店などの看板が目に飛び込んでくる。歩けば思い出のかけらばかり、タイムスリップして胸が熱くなる。こんどは誰と訪れようかなと思いつつ帰宅の途についた。