投稿者:ウエダテツヤ
着物を着てUSJに行ったのは恐らく2015年。12月31日の事だ。かねてよりUSJのカウントダウンに行くことを計画し、前もってチケットを発行していたのだけれど、前日に風邪を引いた。気分は低空飛行。止めようかなとも過ぎったけれど、「もったいない」が勝利して出かけることにした。いつでも行けるとはいえ、夜間に行ったことはなかったし、加えてその1年ほど前にオープンしたハリー・ポッターのエリアへの期待が大きかった。
シリーズについては本で読んだり、dvdで見たりしていたけれどそんな程度だったのだけれど、それでも日常の世界観と異なるであろうそのエリアは一度訪れてみたかった。当時は外出着物生活真っ只中。羽織袴にコートを着てマフラーをぐるぐるして行くことにした。
実際のところはせっかく行ったけれど横になりたい倦怠感でいっぱい。一切アトラクションには乗らず、ウロウロしたり座ったりして場内を散歩しただけになった。チケットは完全に雰囲気代になったけれどそれでも夜のUSJはちょっと幻想的だった。ぼんやりする意識の中で遠くでライブの音が聞こえ、みんな元気やなぁと思ったことを覚えている。
そんな中、我が目的のハリー・ポッターエリア。入り口に係りの方が笑顔で立っていらっしゃった。チケットか何かが必要だったのか覚えてないが通り過ぎる時に「素敵ですね、もう着てこられたんですね」と話かけられた。
ん?
「もう着てこられた」に一瞬よくわからなくなった。いや、「もう」も何も、「ええ確かに着物は着てますけれど」と思いながらハッと気付いた。完全にハリー・ポッターの衣装と間違われているぞ。原因は恐らく着ていたコート。マントのようにも見えるそれはなるほど確かに暗がりでのシルエットが似ていた。
「いやいやいやいや」と心では思ったけれど咄嗟にどう返事するか迷い「いや、あの・・・」と言葉に詰まる。瞬間、係りの方が気付かれて「あ、違いましたね、失礼しました」と仰られたので「いえいえ」と返して会話が終わってしまった。こちらは間違えられると思っていなかったけれど相手もまさか中に羽織袴を仕込んだマントみたいなコートを着た男だとは予想だにしなかったのだろう。係りの方の方が冷や汗だったかもしれない。ほうきや杖は持っていなかったけれど眼鏡はしていた。丸くなかったけれどそれでも無意識に寄せた私が悪かった。
ホグワーツのマントじゃないので、気付いた後からは逆に中途半端でむず痒い気分になったけれどマントを買う情熱も持ち合わせていなかった。完全にコートのチョイスをミスしていたけれど、そんな半端な自分が面白かった。
ぼんやりしていたのもあってカウントダウンについて他のことを全然覚えていないのだけれど、いい思い出になった。着物がどうのこうのというよりもその時着ていた着物のコートによる話である。想像していなかった切り口に出会うと面白い。確かに似ていた。ホグワーツには入学していないけれど。