60 夏の着物をはじめる その4 袴と私のフォーマル

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

毎日着物と決めたときに所持しておかねばならないと思ったのがフォーマルに使える着物たちで、夏物も例外ではなかった。着物を揃える上で大事な「どこまで着物に拘るのか?」について「当分洋服は着ない!」と意気込んだ当時の私だったが、夏の黒紋付は「いや、もうそれは後々でいいわ」と思い、結局今も所持していない。

正直夏のフォーマル着物については喉から手が出るほど欲しい、という訳ではなかったのだけれど、「常に着物を着る」と決めた以上は揃えておかねばと(黒紋付の事は横において)仕立てることにした。一体何を仕立てるべきか、相談したり調べたりして思い至ったのは「何かあっても大体いけるもの」を一つ仕立てるということで、選んだのが一つ紋、黒の絽羽織だった。

絽羽織は当社で取扱いがなかったので、お取引先にお願いして取り寄せてもらった。別の方から「あると便利ですよ」とアドバイスをいただいて決めたのだけれど正にその通り。ちょっとしたときにパッと羽織ればそれなりになる。着物に紋がなくともフォーマル風に仕上がるので様々なシーンで活躍した。というか夏の羽織は正直これしかないのだけれど、買ってよかったと思う。まぁ、選んでもらった生地が滑らかで着心地がとても良いのがそう思わせている気もするけれど。

袴も一つだけは、と思い正絹を取り寄せて仕立てた。けれども袴の透け感はほとんどわからないものもあるので、デザインによっては冬と兼用してもいいのではないかと個人的には思った(そもそも夏のフォーマル着物を着ようと思われる方は「兼用」自体そのお考えにはないかもしれないけれど)。袴好きの私であるけれど夏帯と同じような感覚で結局所持している正絹の夏袴は今もその一点だけ。もちろん、先立つものがあるのならばいくらでも欲しいのですけれども。袴について不満をタラタラ述べると、何だかバタバタと揃えたので私的にはもう少し吟味したかった。ある見本帳の中あまりよくわからないにも拘らず「これでいいか」と軽めに選んだ私が悪いのだけれど結局必要性で買うにせよ、ちゃんと気に入って買わないと私は着ないようだ。だからといって別の物を買おうとまで思わないので、どうしようもない。

カジュアルについて最近は完全に冬と兼用して袴を着用している。もちろん分厚すぎる生地などは暑いのだろうけれど、当社で販売中の「Pleats」を私は年中着用する。

ちなみに着物については「絽」がフォーマルといわれるけれど絽の着物は作らなかったし今も所持していない。代わりといっては何だが、私が購入したのは(57 夏の着物 その1)でもチラッと触れた無地感の夏大島である。自社商品(ほのか縞タイプの夏)で欲しかった着物の一つだったのでこの機に仕立てることにした。夏大島は実は絽でも紗でもなく平織なのだけれど私は私なりのフォーマルカジュアル兼用着として一つ紋を入れて愛用している。