投稿者:ウエダテツヤ
いきなりこう言うと何だが、夏帯への拘りまでは到達出来なかった。
夏に夏帯を締めるべきなのだろうか。そう思って当時いくつか購入した。締めてみて感じたのは夏帯というのはそれを使うかどうかコーディネートへの拘りの領域ではないか、ということだった。
私にとって角帯の幅9.5センチの世界に「涼しい」を見出すことはなかったので、「涼しく見える」「涼しそうにする」ところに意味があるのだろうと思ったのだけれど、色々締めてみた結果、手持ちのいわゆる冬帯で良いと感じてしまったのである。私感ではあるけれど夏帯のすべてが涼しく見えるかというとそうでもないし、夏帯かどうか見てわからないものもある。だからどこまで拘るか、というその一点で夏帯ゾーンに入るかどうかなのだろうけれど、私は簡単に弾き出され退出した。帯に対する私の感覚は年中使うベルトが近いかもしれない(実際当社では角帯ベルトという商品もある)。以降ほとんど冬帯を夏にも使っている。
そもそも言ってしまえばそれが夏帯かどうかというのは製造者側からのアプローチである。着物を例にすると「夏大島」とはいうが、そこに規定があるわけではなく、それぞれの生産者が夏に向いていると考えられる大島をつくっているわけである。透けている=単衣で夏というのは見た目的にそうなのだろうけれど、夏に何を着るのかはドレスコードがないなら着る人の自由である。逆に夏物として販売されているものを冬に着ても良いのだが、周りからすれば透けてて寒々しく感じてしまうのは冬にTシャツ一枚の人を見た時と似た感覚のように思う。
とにかくそういう私なりの解釈を以って夏帯を再考したことで、「夏だけの帯」「夏冬どっちもいける帯」「何となく夏は使わない帯」に分かれていった。「使わない帯」などはその年によって「いける帯」へと変わる場合もあるので、そこはいい加減で明確な基準はない。では、いくつか持っている夏帯をいつ使うのかというと「拘ってる感」を出したいような時なのだけれど、残念ながら年々それが薄らいでいくことを実感している。どうやら私にとってはお気に入りの締め心地が最も重要でそれが夏帯かどうかは二の次のようだ。
ちなみに帯の良し悪しについては当社の社員だけでも言うことがバラバラだ。硬さや滑り、厚さや幅などもそれぞれで帯結びへの拘りとともに千差万別である。締め心地が大事か、季節感が大事かなども色々締めてみると見えてくる。
とはいえ、実は夏帯を締めている人を見掛けると素敵だなぁと思うのだ。私の持っていない拘りを大切にする姿は羨ましいし、もしかすると気に入った夏帯があるのも羨ましいのかもしれない。こうして記していると欲しくなってくるなぁ…いやはや。