47 袴の楽しさにハマる

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

私にとってファッションの楽しさの一つに「解決する」という要素が少なからずある。不足を解決する買い物もそうであるが、想像するイメージや理想的なものと自分の差を解決する為に、考えたり調べたりする事はなかなか楽しい。そういう側面でも袴の存在は着物の楽しさをより実感できた重要なアイテムだった。

袴を着られるようになった頃の話。チャンスがあれば着たいと思っていたけれど当時は普段から着物を着ていたわけではなかった。チャンスなどなくてもいつでも着られる、ということはこの頃の私の発想にはなかったし、だから着る機会と言っても小売店の催事や何かのイベントで精々月1〜2回ぐらい。しかも催事に行っても求められる役割によっては袴はNGと言われることもあって、なかなか頻繁に着用の機会はなかった。それでも今までの着流し一辺倒とは違い、袴という選択肢が増えるだけでそれまでの着物とは違った新しさを発見したように感じ、とても楽しかったことを覚えている。

新しさとは何も形だけではない。例えば帯結び、長着の裾の処理、紐の処理など「着るためのこと」、丈や形などの「仕立て的なこと」、階段の上り下りや椅子や床での立ち座り、トイレの方法など「動作に関すること」といった着流しでは感じなかった「どうすれば良いのだろうか」が沢山あり、それを自分なりに解決することは何となく対話のように感じたりもした。

もちろんこれは性格的なものもあるのだけれど、「着られるならば良い」では納得できない私ならではの楽しみ方だったのだろう。そしてこれらを解決しようとすると着て経験するしかない。袴の裾を踏んづけたり、十文字以外にどうしたらいいかなと試したり、家でうろうろしたり、自宅のトイレで試してみたりしながら、それは新しい自分を蓄積していくようで、だから着ることが楽しかったのだと思う(こうやって記載して初めてわかった)。

ちなみにそうやって学んだことで「こんなものがあったらいいな」という思いに繋がり、やがて商品になる。例えば当社のPleatsという袴はその名の通り【普段に扱いやすく、洗っても筋が取れないプリーツ加工をしたかった=ポリエステル】という素材と【重厚感よりもカジュアル感を重視したいので細身かつ適度な広がりがあり、歩きやすいように余分な生地を極力減らす】という動きの面から商品化した。というと聞こえがいいかもしれないが、結局は私が欲しかったのである。(そんな袴はこちら

解決すれば自分の蓄積と共に、新たな謎が生まれることもあるし、ふと投げ出してみるとそれはそれで心地よいこともある。
そうやって自分なりのスタイルができればそれでいいのかなと思えるのは、とにかく沢山着てみたからかもしれない。