蘇芳香(すおうこう)/一斤染(いっこんぞめ)

日本の色を愉しむ寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

蘇芳香(すおうこう)

蘇芳香とは、ややくすみ気味の紅みの褐色をいう。蘇芳とは、染料となる植物の名前でマメ科の植物で、中国から日本に入ってきたのは8世紀以前といわれる。「香」の名前がつくように香りのよい丁子(ちょうじ)で染めた香色(こういろ)をまねたもの。本来の香染は丁子で染められたが、材料が高価なため紅花の代わりに蘇芳を用い、黄色を加えて紅褐色に。紅花や紫草で染めるのが本物とされていたため、蘇芳で染めたものは「似紅(にせべに)」や「似紫(にせむらさき)」と呼ばれていた。

C40 M90 Y65 K0

一斤染(いっこんぞめ)

紅花で染めた薄い紅色で、平安時代からある色名。貴重な紅花を大量に使い、複雑な工程で染める濃い色はたいへん高価であったため、一般の人には着用が禁じられた禁色(きんじき)となっていた。そこで淡い紅色がさまざまに生まれ、一般に許し色とされた。絹一疋(二反)の絹布をわずかな紅花一斤(600g)だけで染めた一斤染は、限界の濃度まで表現した紅色として流行し、このような色名がある。

C0 M48 Y15 K0