寄稿者:橋本繁美
桜鼠(さくらねずみ)
京都市内の桜も少しずつ咲き始めた。春は桜三月、咲けば咲いたで雨や風といった天気がきになる。さて、桜鼠とは、淡い紅色が灰色あるいは灰色みをおび、わずかにくすんだ薄い桜色のことをいう。いわゆる墨染(すみぞめ)の桜色。語源からすると「灰桜」は灰色みをおびた桜色、「桜鼠」は桜色をおびた灰色ということになる。色名に鼠が付く色は江戸時代初期頃から見られるが、桜鼠は元禄以降に用いられるようになったのではないかといわれている。ちなみに、花の色に「鼠」をつけた色として他に「梅鼠」「藤鼠」がある。
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小豆色(あずきいろ)
赤小豆の実のような紫みのくすんだ紅赤色をいう。「赤」には、古来から厄除けや魔除けの意味があるとされ、「小豆色」も同様に用いられてきた。現在でもお祝いの席や年中行事など、ハレの日に赤飯を食べる風習が残っており、悪いことを退け、良いことが続くようにという祈りが込められてきたもの。赤色の運気の良さと、茶色の落ち着いた控えめな印象がバランスよく同居しているといわれる。『古事記』にこの名が記載されているが、色の名前として使われたのは江戸時代といわれている。小豆といえば、春のお彼岸に欠かせない「ぼた餅」。春は牡丹の花が咲く季節にちなんでこの名前。秋は萩の花が咲くから「おはぎ」と名前が変わる。昔から丹波産の小豆が京菓子によく使われている。
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