投稿者:ウエダテツヤ
前述でGritterのデザインのことに触れたけれど、そもそも生地の製造元は着物用として生地生産は行っていない。今回はそこに辿り着くまでの話。
オリジナルの綿着物を考えようと思ったのは綿着物を意識し始めてしばらく経った頃だった。当時私には絹製品以外で製造の知り合いはなく、父に聞くと「昔はそういう着物も沢山あったけどなぁ」と、思い当たらない様子だった。
聞くと弊社がまだ胴裏卸をメイン事業にしていた昭和にはウールの着物が盛んに取引され、弊社にも胴裏と並行してウールの着物が山積みされていたという。確かに決算書にはそんな記述もあったので、昔は普段着物の需要供給共に盛んだったのだろう。しかしその当時でも弊社に綿生地の取り扱いはなかった。
どうしたものかと思いながら関心を持ったのは着物メーカーの生地ではなく服地素材だった。
そもそも着物は着物専用の生地でなければ仕立てられないというものではない。例えば服資材店などで購入した生地を着物に仕立てようと思えばできる。しかし一つ一つの生地が着物にする上で向いているかは触った感覚だけではなかなか分からない(少なくとも私はそうだった)。服地幅の仕立てを受けない縫製屋さんや受けても別料金※のところもあるので、服地を買ってきて仕立てるのにもそれなりにリスクが伴う。(※縦に生地を真っ直ぐ裁断する手間がかかる)
当の私もアパレル生地問屋さんからちょこまかと買って色々仕立ててみたが、柄や着心地などなかなか思うようにはいかなかった。結果的には散財することになり、これは一から考えないといけないぞと思い直してご紹介いただいたり服地素材の展示会に出向いたりして、何件かのメーカーに辿り着いた。
当時毎日着物真っ盛りだったので、当然洋服の展示会にも着物でいったけれど、とても目立って気になったのを記憶している。いずれにせよ着物業界と異なる場所は新鮮で驚きも沢山あり楽しかった。
具体的なお取引には至っていないけれど、見学させてもらった工場の規模に開いた口が塞がらないこともあったし、サンプル生地の多さに疲れ果てることもあった。規模の違いに、着物は小さな業界なのだと改めて感じたけれど、その分まだまだ出来ることはありそうな気がしていた。こうして今まで当社で取り扱いのなかった素材が少しずつ進んでいった。