寄稿者:橋本繁美 編集:枡儀
ずいぶん昔の話だが、私が広告の世界に飛び込んだ頃といえば、室町関係は元気だった。(室町=着物の流通。市場付近を中心とした室町通一体に着物の流通が集中していた。)販売促進、広告宣伝費に多額の予算をかけて豪華なパンフレットやポスターを作っていた。撮影ロケで海外まで行ったという先輩たちもいて羨ましい時代でもあった。それでもきものは売れていた。京都の繊維業界も活気にあふれていた。
そんな過去を振り返っても、ただの思い出ばなし。いつかは消えていく。明日に向かって、これからのことを真剣に考え、取り組んでいこう。そういえば、若い女性たちに新しいキモノを提案したJ.DREES(通称ジェードレ)というブランドを展開されたこともあった。従来のきもののルールをあえて飛び越え、もっと自由にキモノを楽しもうといったコンセプトをもった商品展開だった。同時に、大島紬を使った洋装コートやジャケットなどの商品開発も進んでいった。当時、京都岡崎にある近代美術館を借りきってパンフレットの撮影をした日が懐かしい。これらの商品群のDNAは現ブランド“nono”に受け継がれているのは確かだ。