83 着物で自転車に乗る

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

学卒後に他府県へ出て7年後に京都に戻った。学卒までは実家に住んでいたけれど、一旦他府県に出て戻った時には実家から会社がバス通勤必須だったこともあって会社近くに住んでいた。近くと言えど徒歩で20分ほどだったので、毎日着物を着るまでは自転車通勤していた。当時は運動不足などに興味もなく、ギリギリまで寝たかった30歳だった。自転車に乗らずに歩いて出勤する理由はなかった。

正直当時の事はあまり覚えていないのだけれど、スーツで自転車に乗っていた記憶が鮮明に残っているのは、一度盗難自転車を調べる警察官に呼び止められたことがあったからだ。どういう基準で呼び止めるのかはわからないけれど、スーツでマジメそうなはずなのに、とガッカリしたことを覚えている。それがまた譲り受けた自転車だったので結局嫌疑が晴れるまで数時間警察署で待機するというあまり経験しない事があったので記憶が残っているというわけだ。

閑話休題。とにかくスーツで3年自転車通勤した頃に着物を毎日着るようになって徒歩通勤が始まった。思えば15分以上の徒歩通いというと高校生時分に駅から学校まで歩いていた以来。初めの方は着物で街を毎日歩く新鮮さに楽しくもあったけれど、生活習慣とはなかなか直せないもので、段々自転車に乗りたくなった。

ある日着物で自転車に乗ってみようと挑戦してみたところ、特に面白いエピソードになるわけでもなく意外と乗れた。たた風で裾がヒラヒラして開けるのが結構ストレスで、どうしようかと色んな人に聞いてみたけれど解決に至らなかった。仕方なく裾をクリップで留めてみたりもしたけれどしっくりはこなかった。

結局は毎日着物で自転車に乗るよりは歩いたほうがいいかという判断をして、数ヶ月で自転車通勤はやめてしまった。その後に着物自転車なども発売されたと聞いたけれど私の判断を覆すには至らなかった。

最近でも必要に迫られて乗ることはあるのだけれど、サイクリングや自転車通勤の際には洋服を着る。それが着物と私の距離、しっくりくる自分のキャラ設定なのだけれど、あくまで私のことなので興味のある方はチャレンジしてみてはと思う。案外普通に乗れるけれど、安全面には十分気をつけて下さい。