寄稿者:橋本繁美
年賀状(ねんがじょう)
師走の暦を見るたびに、年賀状の準備をはじめなければと思うのだが、毎年のことながら出遅れてしまう。正月に届けたいのなら、12月25日までに投函せよと郵便局はいうが、そうは簡単にはいかないものだ。年賀状は、本来、1月2日の書初めの日に書くべきものであった。年賀とは、新年の祝いだけに、新年になってから述べるのがあたりまえである。いや、そもそも、新年を迎えれば父母や主君、師匠などに挨拶に出向くのが当然で、それが遠くで行けない場合に、年賀状を送付するわけである。それがいつの間にか、12月のうちに投函しなければならない風習ができてしまったとある作家が嘆いていたのを思い出す。
年賀郵便の特別扱いがはじめられたのは明治32年(1899)で、全国どこの郵便局でも取扱うようになったのは明治38年から。年賀状のための特別切手(年賀切手)が発行されたのは、昭和10年(1935)、お年玉つき年賀はがきの発行は昭和24年からで、年賀状のブームを作り出したといわれる。平成、令和と時は流れ、スマフォやパソコン等のメディアによって、年賀はがきの発行数も減ってきているそうだが、やはり正月に届く年賀状はうれしいものである。一枚一枚、工夫されたデザイン、あたたまるメッセージ、贈り主の顔が浮かんでくる。「元気いるか」「元気だよ」「ことしも、よろしく」。そんな会話が飛び交う元旦の朝。いつも郵便配達さん、ありがとう。
初暦(はつこよみ)
新年になって初めて暦を用いることを「初暦」という。新しいカレンダーや手帳に用事やスケジュールを書き入れたり、その頁をめくるときの引き締まった思いは新年ならではのもの。暦の語源は「日(か)読み」といい、むかしは読むは数えるという意味だった。どうかこの一年、三六五日にたくさんの幸せが刻み込まれること願う。
七草(ななくさ)
秋の七草が鑑賞用なのに対して、春の七草は食用。芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう・母子草)、繁縷(はこべら)、仏の座(ほとけのざ・田平子)、菘(すずな・蕪)、蘿蔔(すずしろ・大根)。この七草を摘んでくることを「若菜摘み」という。1月7日の「人日(じんじつ)の節句」にいただく七草粥は、新しい生命力を身につけ、無病長寿を願ったもので、お正月のご馳走で疲れた胃にやさしい食事として、現代も受け継がれている。