28 大島紬の島で2

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

27のつづき)
結局、大島紬の勉強(製造工程を実際に行う)にはジャージで行き、普段はデニムを履いて、小物ショップはスーツ、お客様の案内は奄美のTシャツ、着物の販売接客では着物か作務衣というファッションにおいても何者かわからない私なりのTPOで奄美生活の2年を過ごした。着ているもので何をしている最中かわかってしまったと思う。

「着物か作務衣」と表現したが、ここは大島紬の聖地。私の記憶では2年間の居住期間において他産地の着物を着ている人を見かけたのは、着物関係者と共に産地見学などに来られる島外の消費者とイベントでの浴衣姿、幾人か見かけた振袖だけだった。私の結城紬も、西陣の紬も、ポリの着物もそのすべてはクローゼットにしまったままだった。

今後着ることはないかもしれない。そう思うほどに完全に蚊帳の外、着る時を損なった私の着物たちは、まさかこの後に活躍の場があるなど思っていなかっただろう。

とにかくその島で私を取り巻く着物は、その全てが大島紬だった。帯や小物はもちろん合わせるけれど、合わせるものでしかなかった。あの島でどれだけ頑張っても主役になれる着物は大島紬以外にない。

そんな島の主役に関わりながら、私自身はふらふらしていたけれど、それでも奄美大島での日常は楽しかった。馴染みのない釣りに連れて行ってもらったり、星が想像を絶する美しさだったり、黒糖焼酎や郷土料理が美味しかったり。とっつきにくい人もわからない言葉も多かったけれど皆親切だった。

太陽と海と山。私には少し物悲しく聞こえる島唄に郷土料理。そこにいる人と相まって味わい深い文化がそこにある。ぜひ一度行ってみてほしい。方向音痴の私の案内ではなく(笑 27参照

参考:黒糖焼酎「奄美の杜」